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東京高等裁判所 昭和61年(行コ)30号 判決

神奈川県鎌倉市雪ノ下一丁目一六番三四号

控訴人

川崎一

右訴訟代理人弁護士

苅部省二

日浅伸廣

東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番九号

被控訴人

日本橋税務署長

大野道行

右指定代理人

田中澄夫

荻野譲

藤田忠志

佐藤敏行

中川幸雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、「原判決を取り消す。本件を東京地方裁判所へ差戻す。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三枚目裏六行目の「業積不振」を「業績不振」と改める。

2  同八枚目裏一〇行目の「川崎美那」を「川崎美耶」と、同行括弧内の「『美那』」を「『美耶』」とそれぞれ改める。

3  同九枚目表一〇行目の「なかつた。」の次に「控訴人は、吉田に対し、控訴人宛の書留郵便物を受領する権限を明示的にも黙示的にも与えたことがなく、控訴人個人の印章を保管させていたこともなかつた。」を加え、同裏三行目及び四行目にそれぞれ「美那」とあるのを「美耶」と改める。

4  同一〇枚目表八行目の「ものである。」の次に「右病状は、直ちに生命に危険が及ぶもので、人事不省、意識不明の状態と同様の重患に該当し、家族に口授して筆記させることもできないものであつた。」を加える。

5  同一二枚目裏六行目の「原告宛」から一三枚目表二行目の「受領していた。」までを「吉田は、控訴人の個人所有の旧川崎ビルの管理人に採用されて以来、現川崎ビル建築後は川崎地所の従業員として、本件当時まで引続き二〇年近く勤務してきた者であり、川崎地所は、代表取締役である控訴人の個人企業たる実体のものであつて、吉田は、川崎地所の唯一の従業員であり、川崎ビルに住み込み、常時、かつ、同ビルの全体にわたつて、その管理に携わつていた。吉田は、右のような長年の勤務関係から、個人としての控訴人と川崎地所代表取締役としての控訴人とをことさら区別して事務処理をすることはなかつたし、控訴人自身も、郵便物の受領等につき会社と個人とを区別する措置をとることがく、普通郵便物は、個人宛のものも会社宛てのものも、川崎ビル一階の川崎地所名の郵便受箱に配達され、これを吉田が回収して控訴人のもとへ届け、あるいは控訴人の出勤日まで一時守衛室の机の引出に入れて保管し、控訴人に手渡していた。そして、書留郵便物についても、吉田は、川崎地所の受領印を預つていて、これを用いて受領しており、それは会社宛のものばかりでなく、控訴人個人宛のものについても同様であつた。控訴人は、吉田が控訴人宛の書留郵便物を受領することを禁じたことはなく、その受領の権限を吉田に黙示的に与えていたものである。」と改める。

6  同一三枚目表九行目の「本件通知書は、」の次に「前記(1)の届出住所地宛」を加え、同裏一行目の「交付した。」を「交付し又は守衛室内の同人の机の引出に入れて、同人がこれを了知し得る状態に置いた。」と改め、同七行目の末尾に続けて「そして、吉田が守衛室を不在にしたり、一時的に川崎ビルを留守にする場合にも、同ビルの管理を全く放棄することはできないのであるから、当然、同人は、竹内に対し、配達される郵便物や荷物の受領等を含めて、自己の不在中必要となると思われる事務処理の代行を依頼していたものと推認すべきであり、したがつて、本件通知書の配達に際しても、竹内が吉田に代わつてこれを収受し、同人に指示された保管場所である守衛室の机の引出の中にこれを保管したものとみるべきである」を加える。

7  同一四枚目裏九行目の末尾に続けて「ただし、控訴人は、前記鎌倉市の自宅に本来の住所を有しているのであるから、東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番二号の事務所への送達は例外的なものというべく、送達の適否については厳格に解釈すべきであるところ、右地番所在の川崎ビルには多くのテナントが入居しており、控訴人の事務所は同ビルの八階にあるので、郵便物に右地番を表示したのみで、『川崎ビル八階』の表示を欠いているときは、送達場所が特定されているとはいえす、現実にも八階事務所へ配達されることがない。」を加え、同一〇行目の「原告宛」から同一五枚目表一行目の「認める。」までを「吉田が、控訴人個人所有の旧川崎ビルの管理人に採用され、現川崎ビル建築後は川崎地所の従業員となり、同ビルの管理に携つていたこと、川崎地所の代表取締役が控訴人であり、吉田はその唯一の従業員であつたこと、普通郵便は、川崎地所宛のものも控訴人個人宛のものも、川崎ビル一階の川崎地所名の郵便受箱に配達され、吉田がこれを控訴人の出勤してきたときに控訴人に手渡していたこと、吉田が川崎地所の受領印を預かつていたこと、以上の事実は認め、その余の事実は否認する。」と改める。

8  同一五枚目表九行目の「『受領』したこと」の次に「又は竹内が本件通知書を吉田の机の引出に入れ、同人がこれを了知し得る状態になつたこと」を加える。

三  証拠関係は原審及び当審記録中の書証目録及び証人等目録各記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本件訴えは適法な審査請求を経ていない不適法なものであると判断するものであつて、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一九枚目表一行目の末尾に続けて「なお、控訴人は、『川崎ビル八階』の表示を欠くときは送達場所が特定されない旨主張するが、前記東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番二号は、控訴人自身が納税地として届出(所得税法一六条二項に基づくものと推測される。)をしたものであり、右地番を表示した郵便物が、宛名不完全のために配達不能になる等のことがあれば格別、そのようなことがなく、同地所在の川崎ビル内において、受領権限を有する者の手に渡ることが可能である限り、右『川崎ビル八階』の表示を欠いたからといつて、適法な送達たり得ないということはできない。」を加え、同八行目の「証人吉田菊次の」を「原審証人吉田菊次及び当審証人服部常雄の各」と改め、同一〇行目の「管理」から一一行目の「勤務していたこと」までを「管理を委託されている神近管財に雇庸され、毎日同ビルに出勤し、午後の四時間は同僚の服部常雄と二人で、その余の時間は同人と交代で一人ずつ、同ビル一階の駐車場管理人室に居て、駐車場のエレベーター操作その他の管理業務に従事していたこと」と改め、同裏六行目の「あつたこと、」を「あり、長時間外出する際には、駐車場管理人室にいる服部又は竹内に断つていたこと、服部及び」と改め、同一一行目の「なかつたこと、」の次に「なお、吉田が、外出する際に、服部に、区役所から清掃についての書面が来たら右受付印を押してしくれるようにとの依頼をしたことが一、二度あつたこと」を加える。

2  同二〇枚目表二行目の「竹内」の前に「服部及び」を加え、同五行目の「ことの各事実が認められる。また、原告の長女美那」を「のであり、控訴人が病気等で出勤できないときは、時に川崎ビルを訪れる控訴人の長女美耶に郵便物を手渡すことがあつて、、現に控訴人の後記療養中も一週間ないし二週間起き位に美耶が同ビルを訪れて吉田から郵便物を受け取つていたことが認められるところ、美耶」と改める。

3  同二一枚目表三行目の「とおりであり、」の次に「吉田が控訴人個人所有の旧川崎ビルの管理人に採用され、現川崎ビル建築後は川崎地所の従業員となり、同ビルの管理に携つていた事実、川崎ビルの代表取締役が控訴人であり、吉田はその唯一の従業員であつた事実、」を加える。

4  同二五枚目表一〇行目から一一行目にかけての「昭和五七年二月二一日前」を「昭和五八年三月三一日以前」と改める。

二  以上の次第で、本件訴えを却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条を、八九条適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高野耕一 裁判官 野田宏 裁判官南新吾は転補につき署名捺印することできない。裁判長裁判官 高野耕一)

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